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医学生がヤングケアラーを経験して

最近テレビで報道されることが増えてきた「ヤングケアラー」という言葉

定義としては

本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと

を言います

具体的には

①障害や病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている

②家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている

③障害や病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている

④目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている

⑤日本語が第一言語でない家族や障害のある家族のために通訳をしている。

⑥家計を支えるために労働をして、障害や病気のある家族を助けている。

⑦アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している。

⑧がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている。

⑨障害や病気のある家族の身の回りの世話をしている。

⑩障害や病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。

などのことを言います。

こども家庭庁 https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/about/

私は中学生の頃に母が病気なってから家事や看病を行い、大学生では母がさらに病状が悪化し長期入院の見舞いや、退院してからも看病や家事の比重は増えることに

しかし

私は自分がヤングケアラーであることを知りませんでした

学生の頃は他者の家庭と比べるという発想がなく、看病や家事をすることは当たり前と育てられ

母は身体が弱く、母が子供のころから家で寝ていることや入院をしていることが多かったので

母が小さい頃は祖父曾祖母が甲斐甲斐しく世話をしてくれるのが当たり前

私が幼いころも祖母が育児も看病もしてくれるのが当たり前

祖母が亡くなってからはが看病するのが当たり前

思い返すともの凄く身勝手な発想だと思いますが、母の中では人に助けてもらうのが当然で、自分一人で頑張って生きようという発想は全くありませんでした

中学、高校ではまだ母が入院した時や体調不良で動けないときに出来る範囲で料理や皿洗い、洗濯などをしていましたが

(元々母は全ての家事が苦手なので掃除は滅多にしないし、食事も数パターンしか作ってもらった記憶がない)

状況が悪化したのは私が大学生の時

医学生として毎日朝から晩まで講義

2週間に1回参考書1冊分の試験勉強

解剖を行っている中で

母が病状悪化して長期入院。

ですが入院中も母の我儘は健在で…

レンタルのパジャマは嫌だから浴衣をアイロンかけて持ってきて

病院の洗濯機は汚いから着替えは全部自宅で洗って持ってきて

病院食は不味いからデパ地下総菜や果物を買って来い

松前漬け…ちまき寿司…どこにも売っておらず何軒も探し歩いたことも…

(病気で食事制限がかかっているのに、不味いからと全く食べず、主治医が食べないよりは食べたほうが良いと許可した)

大学の講義が終わった後、家に帰り、着替えや食べ物を持って面会へ

面会時間ぎりぎりまでいて汚れた服を持って帰る

家に帰れば夕飯や洗濯、掃除が待っていて気付けば0時を回っている

その後大学の課題や試験勉強をして、睡眠時間は3時間

そんな日々が7か月ほど続き、やっと母が退院、大学も休みになり、睡眠時間が確保できると思った時にはもう身体は壊れて眠れない身体になっていました

今から考えれば、母の入院生活は明らかにおかしかった

パジャマはレンタルすればいいし

洗濯は病院のものを使えばいい

食事制限がかかっているのなら我慢して病院食を食べるべき

私が睡眠時間を削って身体を壊してまでやる必要のなかったこと

母が全く我慢せず、私に頼っていただけ

退院後も母は体調不良で寝ていることが多くなり、私がほとんどの家事をしていました

ですがこの時私は自分がヤングケアラーだと、自分が一般的な家庭ではないと思いもしていませんでした

忙しすぎて考える暇もなかったし、比べる相手もいなかった

特に医学部は平均よりも裕福で恵まれている家庭が多いため、自分の状況を相談しても同級生や先生ですら理解できない

理解してもらえないことで、より話すのが恥ずかしくなり相談しなくなる

という負の連鎖で孤立していく

ヤングケアラーの問題点は

物理的な時間の拘束や疲労に加えて

周りに同じ環境の人がいないため、理解してもらえない

助けてもらう方法も知らなければ、助けてもらえる場所も少ない

そもそも自分がヤングケアラーであることを知らない

ことにあると思います。

政府は家族の介護や世話に追われる「ヤングケアラー」の支援を法制化する方針を固めた。法律で初めて明文化する。自治体などの自主性に委ねられてきた支援に法的根拠を設けることで、対応の地域差解消につなげる狙いがある。支援の対象は子どもに限らず成人した若者(18歳以上)まで広げ、切れ目のない支援を目指す。2024年の通常国会に関連法案を提出する見通しだ。

毎日新聞(2023/12/26配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/8f89ddc303c8c63712bee33f5421bc11e7086f9e 

このように国の方針としても、支援に法的根拠を設け国会に提出する見込みとのことだが、現時点ではまだヤングケアラーを援助する環境は限りなく少ない

まずはヤングケアラーというものがあるということを学校やSNSなどで周知し、自分がそうかもしれないと気付いてもらうこと

また時間はかかるだろうが、学校や申請窓口を通して、要介護認定などと同じように支援を行える環境を整えることができればヤングケアラーやダブルケアラーの助けになるのではないかと考えています。

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